大村はま奨励賞

☆第1回大村はま奨励賞は山本賢一氏に☆

大村はま奨励賞は、四十歳以下の教員による優れた国語単元学習の実践を顕彰するものです。ことばを育てる専門家としての教師の働きにきめ細かく目を向け、国語単元学習の意欲的な実践を励ますことを目的とし、今年度から設置されました。

その栄えある第一回受賞者は、埼玉県川口市戸塚北小学校の山本賢一氏と決まりました。その実践研究は、「知ろう『川口の私』『ロンドンのあなた』」~自分らしく楽しく書き、お互いが育つ文集交流を目指して~」と題され、ロンドン日本人学校補習校の河内知子氏との二年度にわたる共同研究です。互いに自分たちを知らせる文集を作成し、交換、感想の交流をした実践。実の場で意欲的に、かつ誠実に取り組んだ点が高く評価されました。

第一回表彰式は平成二八年十二月三日、関西大会の場でとり行われ、賞状と副賞十万円が授与されました。審査員代表の村井万里子鳴門教育大学教授から審査講評が伝えられ、多くの重要な発見と示唆、希望が示されました。続いて山本賢一氏の受賞のあいさつがあり、頬を染めたスピーチに心からの拍手が送られました。

 《審査員団よりの講評》

・異学年、異地域の児童たちとの文集交流という実践全体に、大村国語教室の精神が浸透していると感じる。地球規模の交流を課題とする現代の時代的要請に応えるものである。

・二年間にわたる模索の中で、学習のてびきを、学習内容や目的に応じて工夫し、児童の反応や実態に対応して改善を図り、課題を明らかにしている。

・「書き出し」の型の整理は、今後の作文指導に生きる汎用性がある。

・学習者一人一人に情報発信の意識が育ち、ものを見る目が育ってきたことを確認できたことは素晴らしい。「よさを見つける“目”を育てる」ことは永遠の課題である。

・実の場における他者との交流が、書く意欲の原点となり、相手を考え、自分自身を知ることになることが実証された。

・この単元で育てたい力を育てるだけでなく、それ以外の「学習力」自体も育てられている。単元学習ならではの効果がある。

・共同研究をした教師同士の謙虚な学び合いが実践を支えている。

・「よい文章」の「よい」の意味を単純な「わかりやすさ」から脱皮させ、具体性・発展性・個性の現れへと変えていく必然性が見られた。文章を見る目を身につけると、作文力は大きく向上するだろう。今後の実践研究に期待する。

審査員団・湊吉正 桑原隆 甲斐雄一郎 浜本純逸 村井万里子 安居總子 苅谷夏子

大村はま記念国語教育の会常任理事会(敬称略)

〈授賞式での審査員講評から・村井万里子理事〉

 「大村はまの実践を現代の教育現場がいかに主体的に受け継ぎ発展させるか」―山本賢一実践は、本会のこの課題に応えるものです。

①子どもの実態・発達の難所を直視しています。小学校四年生は「九歳の変化の時期」―日記や作文が「楽しく書けない」「内容・形とも型にはまりがちになる」―これはこの時期の発達的特徴であり、克服がむずかしい。これを動かし自発的・意欲的な表現に変えるために、②「実の場」(ロンドンの二年生との長期の交流)を作り、子どもの主体的表現を引き出し、その表現を解釈し、受けとめ、個と集団に広げる。③表現活動の要所ごとに、こまやかな「てびき」(実例・題材例示、書き出し例、用紙の工夫、交流の着眼点等)を、糸を吐くようにきめ細かに柔らかく繰り出す。このプロセスのなかに、子どもにも教師にも、清新で本質的な「発見」が生み出されていきます。

これは、大村はまの師・芦田恵之助が小学校六年間の「綴り方(作文)指導」によって切り拓いた実践研究の本流であり、これを「中学生」に引き継いで、「読む・聞く・話す」にまで発展させたのが大村はま実践でした。

山本実践は次のような発見をしています。

〇発信や返事を書く時の充実度以上に、相手からの「返事」を受け取った時の子どもの反応が大きい(=「表現の学習」の特徴)。

〇質問形で尋ねるよりも自分の側の該当する情報を書き送る方が、知りたいことを得やすい。

〇質問に答えるだけでなく、視点を広げて話をつないでいくことが、交流内容を充実させる。

これらはみな「てびきの精神・対話交流の原理」に深くつながっています。山本実践では、これらの発見に導かれ、学習の進行につれて「よい文章とは」の答えが「わかりやすさ」から「豊かさ」へと、重点を移していきます。その変容は、厳しく力強くわくわくする過程です。

実践の秘鑰を、山本氏は手に入れました。

 《山本賢一氏 受賞のあいさつ》

埼玉県川口市戸塚北小学校・南部国語の会  山本 賢一

この度は「第一回大村はま奨励賞」という大変大きな賞をいただき、本当にありがとうございます。大変うれしいことだという思いと共に、身の引き締まる思いでもあります。

思い返すと大村先生との出会いは大学の頃になります。課題図書の一冊に「教えるということ」が含まれていました。その中の「『優しくて親切』などは長所でも何でもない、教師として当たり前のことです。…教師は専門家ですから、やっぱり生徒に力をつけなければだめです、本当の意味で」という言葉に衝撃を受けたことを覚えています。自分の認識の甘さを感じさせられました。そして教師になってからは「『研究』をしない教師は『先生』ではないと思います」という大村先生の言葉に背中を押されながら、実践を重ねています。

今回のロンドンとの文集交流を通して、大村先生のてびきにはものを見る「目」を育てるための様々な工夫がされているということに気付くことができました。このことが私にとっての最大の収穫です。

これからも大村先生から学んだことを生かし、また更に大村先生の実践から学びながら、子どもたちのものを見る「目」を育て、子どもたちの言葉を育てるような実践を行っていきたいと思っております。

今回の実践は共同研究者であるロンドンの河内知子先生なしでは行えないものでした。河内先生の一人一人によりそったてびきや交流のアイディアには多くのことを学ばせて頂きました。今回の実践は子どもたちだけでなく教師同士の交流でもあったように思います。

また、今回の実践を行うにあたって多くの先輩の先生方にご指導、ご助言をいただきました。河内先生をはじめ、ご協力いただきました全ての先生方に御礼申しあげます。

 

第2回大村はま奨励賞募集要項

【「大村はま奨励賞」設置の趣旨】

大村はま(1906~2005)は、一人ひとりの子どものことばの力を育てるために、比類ない国語単元学習を実践しつづけました。本会の初代会長であり、長く日本国語教育学会会長であられた倉澤栄吉先生は、21世紀にむけて「単元学習が必要欠くべからざるものである」ことを強調しておられました(『国語学室の思想と実践』東洋館出版社、1999年、など)。大村の遺した質・量ともに圧倒的な実践と、その底を流れる深い教育的見識は、今日もなお、教室の糧とすべきものです。
大村はま奨励賞は、40歳以下の教員による優れた国語単元学習の実践を顕彰することを通じて、ことばを育てる専門家としての教師の働きにきめ細かく目を向け、国語単元学習の意欲的な実践を励ますことを目的とします。

【賞の内容】

年間一件   正賞 賞状  副賞 10万円

【審査委員】

湊吉正(本会会長・筑波大学名誉教授)  桑原隆(筑波大学名誉教授)  甲斐雄一郎(筑波大学教授)  村井万里子(鳴門教育大学教授)  浜本純逸(神戸大学名誉教授)  安居總子(本会理事長)  苅谷夏子(本会事務局長)  大村はま記念国語教育の会常任理事会

【第一回 大村はま奨励賞 応募について】

応募条件

  1. 小・中学校、高等学校等における国語単元学習の優れた実践であること。
  2. 大村はま実践に学ぶことで得た指針・着想・目標などが明確に示されていること。
    1. 基本的姿勢:学習者のことばの力を伸ばし言語生活を豊かにするため、一人ひとりの実態を捉え、実の場での学びを工夫・提案する。教師の研究的姿勢が明確に示されていること。
    2. 中心的取り組みの例:思わず深く読む読み手を育てる単元、主体的な学習者を育てる学習記録の指導、書くことを習慣とするための取り組み、いきいきとした書き手を育てる単元、確かに聞く姿を実現する単元、参加者が話したい種を持って行われる話し合いの指導、互いが育つ交流の実践、豊かな読書生活の指導、古典に親しむための単元、 など
    3. 具体的手だての模索:こどもの発想を拓き、自ら学ぶ姿勢に導くてびきの工夫 など
    4. 単元構想・教材が魅力的であること。
  3. 平成27年4月以降の実践であること。
  4. 継続的単元、帯単元、共同実践研究も対象とする。
  5. 応募者は応募時に40歳以下の本会会員であること。
  6. 大村はま記念国語教育の会理事からの推薦があること。(本会理事は1年に1件の推薦ができる)

応募方法

平成29年8月31日必着で下記書類一式を本会事務局に郵送してください。

【提出書類】

  1. 応募用紙 1部
  2. 実践の概要(A4で1ページ、1000字程度) 1部
  3. 実践報告・資料(A4で合計25ページ以内) 12部
  4. 本会理事による推薦書 1部

応募用紙、推薦用紙の請求は事務局までメールでお申し込みください。

大村はま記念国語教育の会事務局
hokokugo@gmail.com