2025年度 第10回大村はま奨励賞 募集要項
【「大村はま奨励賞」設置の趣旨】
大村はま(1906~2005)は、一人ひとりの子どものことばの力を育てるために、比類ない国語単元学
習を実践しつづけました。本会の初代会長であり、長く日本国語教育学会会長であられた倉澤栄吉先生
は、21世紀にむけて「単元学習が必要欠くべからざるものである」ことを強調しておられました(『国語学室の思想と実践』東洋館出版社1999 年など)。大村の遺した質・量ともに圧倒的な実践と、その底を流れる深い教育的見識は、今日もなお、教室の糧とすべきものです。
大村はま奨励賞は、45歳以下の教員による優れた国語単元学習の実践を顕彰することを通じて、こ
とばを育てる専門家としての教師の働きにきめ細かく目を向け、国語単元学習の意欲的な実践を励ます
ことを目的とします。
【賞の内容】年間一件 正賞 賞状
副賞 10万円 帝国器材株式会社より復刻版「黄金の椅子」
【審査委員】甲斐雄一郎(本会会長) 苅谷夏子(同理事長) 村井万里子(鳴門教育大学名誉教授)
田中宏幸(広島大学名誉教授) 大村はま記念国語教育の会常任理事会
【応募条件】
①小・中学校、高等学校等における国語単元学習の優れた実践を研究的姿勢でまとめたもの。
②大村はま実践に学ぶことで得た指針・着想・目標などが明確に示されていること。
A 基本的姿勢:学習者のことばの力を伸ばし言語生活を豊かにするため、一人ひとりの実態を捉え、
実の場での学びを工夫・提案する。教師の研究的姿勢が、実践とそのふり返りに表されている。
B 取り組みの例:思わず深く読む読み手を育てる単元,主体的な学習者を育てる学習記録の指導,書くことを習慣とするための取り組み,いきいきとした書き手を育てる単元,確かに聞く姿を実現する単元
発言したい種を持って行われる話し合いの指導,互いが育つ交流の実践、豊かな読書生活の指導、古典に親しむための単元,等。
C 具体的手だての模索:こどもの発想を拓き、自ら学ぶ姿勢に導くてびきの工夫 等。
D 単元構想・教材が魅力的であること。
③2023年4月以降の実践であること。
④継続的単元、帯単元、共同実践研究も対象とする。
⑤応募者は応募時に45歳以下の本会会員であること。
⑥大村はま記念国語教育の会理事からの推薦があること。(本会理事は1年に1件の推薦ができる)
【応募方法】
2025年8月31日必着で下記書類一式を本会事務局に郵送してください,
《提出書類》 ①応募用紙 1部 ②実践の概要(A4で1ページ、1000字程度)1部
③実践研究論文(A4で25ページ以内。文字、図表などは容易に判読できるサイズで)13部
④本会理事による推薦書(1ページ)1部
*応募用紙、推薦用紙は余裕をもって事前に事務局までご請求ください。
お問い合わせも下記まで。
大村はま記念国語教育の会事務局
275-0013 習志野市花咲1-20-23 苅谷方 hokokugo@gmail.com__
第9回大村はま奨励賞 は甲斐伊織氏へ
2024年度第9回大村はま奨励賞は学習院中等科 甲斐伊織氏に贈られた。実践研究のタイトルは「指導者と学習者が共に振り返る学習経験の蓄積 ―単元「学びを言葉に」」。計画的に、慎重に積み上げてきた様々な単元を、学習記録を元に振り返り、学びの足跡を言語化することで、個々の学びをより確かなものにし、同時に先へとつなげていこうとする実践。てびきの確かな活用も印象的であった。甲斐氏には賞状と副賞10万円、そして帝国器材株式会社提供の「黄金の椅子」復刻版が贈られた。
〈大村はま奨励賞の歴代受賞者〉
第1回大村はま奨励賞 山本賢一氏 (埼玉県川口市戸塚北小学校)
「知ろう『川口の私』『ロンドンのあなた』」
~自分らしく楽しく書き、お互いが育つ文集交流を目指して~
ロンドン日本人学校補習校の河内知子氏との二年度にわたる共同研究。互いに自分たちを知らせる文集を作成し、交換、感想の交流をした実践。実の場で意欲的に、かつ誠実に取り組んだ点が高く評価された。
第2回大村はま奨励賞 神田さおり氏(埼玉県深谷市立明戸中学校)
「『思い』を読むことで古典に親しみ、豊かな心を育てる学習指導の工夫
―三年間を見通した言語活動を通して―」
中学校三年間で、段階を踏みながら「古典に親しむ」取組みを重ね、高校での古典学習への接続までを見据えた、厚みのある実践である。「卒業単元『学びをテツガクしよう』」と決まった。積み重ねた学習記録を「学び」の足跡として振り返り、「学ぶこと」について考えを持ち、深く話し合い、五年後の自分へメッセージを書く、という長期にわたる取り組み。
第3回大村はま奨励賞 藤田賀史氏(徳島県徳島市佐古小学校)
「『ひととの出会い』を通じて心に平和のとりでを築く学習指導
―新聞を学習材として活用して―」
藤田氏が長く集めつづけた膨大な量の新聞記事を生かし、原爆ドームや戦争、平和に確かな目を向けさせようとする実践であった。
第4回大村はま奨励賞 藤井美幸氏(岩手県雫石町立雫石中学校)
インクルーシブ教育を踏まえた主体的な学びを実現する単元学習
ー多様な学習者が対等に学習に参加する古典入門単元の実践ー
「竹取物語」のパロディ化という試みによって学習意欲を誘い、古典入門単元の可能性を果敢に広げようとした。大村はまの「優劣のかなたに」を見据えた試みである。
第5回大村はま奨励賞 阿部千咲氏 (横浜市立大鳥小学校)
「どの子も自分のことばで考え表現し、ことばの魅力に気づき、ことばを育んでいく単元学習を目指して」
伝記と自伝の読み比べから、10年後の自分へのビデオレターを作る試み。また独自の星野道夫オリジナル写真集を編集する試み。魅力的な単元を長期的な視野で展開した。
第6回大村はま奨励賞 該当者なし
第7回大村はま奨励賞 数井千春氏(東京学芸大学付属小金井中学校)
「卒業単元『学びをテツガクしよう』」
丁寧に積み重ねた学習記録を「学び」の足跡として振り返り、「学ぶこと」について考えを持ち、なかまと深く誠実に話し合い、五年後の自分へメッセージを書く、という長期にわたる取り組み。
第8回大村はま奨励賞 廿樂裕貴氏(現お茶の水女子大付属中学校)
「子どもひとりひとりが「創作する人」になる試み」
ショートショート作家田丸雅智氏のワークシートをきっかけに、意外なことばを衝突させることで創作のエネルギーを得、てびきを生かしながら作品化を助けた実践。